大沢俊介のブログ|SHITTAKA TOKYO

世の中を斜めの角度で歩く、大沢俊介の提供でお送りします。

長旅はただ嬉しいだけではなく飽きるもの、沢木耕太郎「深夜特急」

   

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タイに1週間の「旅」に行った。旅というよりは旅行なのだけれど、数年前の春、高校時代の友人と共に初めての海外旅行に行った。

バックパッカー的な旅がしたかったので、いくつかのルールを決めたのだが、それがこれだ。

・事前にホテルは取らない
・食事はできるだけチャレンジングに
・現地の人を直に知れる旅にする

現地の空気を味わって、生活の気配までも楽しもう。ホテルは日本語の予約サイトではなく、現地の人とコミュニケーションをとって探そう。そういうことにした。

旅は成功だった。現地の空気も知れたし、現地の遊びも満喫した。初日、空港につくと深夜で困ったが、それ以外は順調だった。

旅は絶頂に楽しかった。もっと旅をしたいと思った。

日本に帰った後、絶頂の旅を思い出しながら、沢木耕太郎の「深夜特急」を読んだ。深夜特急はバックパッカーのバイブルと呼ばれることも多い1冊。香港から始まり、陸路でロンドンを目指すという、当時としては考えられない旅を20歳すぎの沢木耕太郎は決行した。

その物語は多くの若者の心を捉え、多くの旅を生んだ。

しかし、この本の魅力は「旅って最高」と旅を崇めているところではない。沢木耕太郎の旅への愛情も感じられるが、それ以上に「旅の本質」を付いている。

深夜特急の文庫は1巻から6巻まであり、旅路と同様、巻が進むにつれて旅は進む。1巻では新鮮だった旅は、6巻では怠惰なものとなり、飽きすらも感じられる。沢木耕太郎は5巻あたりで筆を止めてしまったと語るが、それほどに「旅は飽きる」ものなのだということも感じた。

旅は刺激的すぎる。あまりにも刺激的すぎて、人が自分の中で理解するには耐えられないものなのだ。そしてそれは時がたつにつれて深刻となり、疲労、怠惰へと変わる。

旅は刺激的だ。しかし、刺激的すぎるからこそ飽きるのだ。

そして、文章というものはその人の感情をそのままに受け取るものーー飽きているものを書いているとき、読み手もその飽きを感じるーーなのだということも、同時に知った。物語だけではなくその時の感情さえも知ることができる。それが書くということなのだ。

「深夜特急」

Amazonより

94年2月生まれ、雑司が谷在住のフリーランスライターです。レオパレス21やヤフーのオウンドメディア、テッククランチでのライターをやっています。あとはIoT/DIY/ライフスタイルなど幅広めの連載をやったりしています。エッセイスト志望
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